変われない、22時
難波は、来るたびに街が変わる。
あの商店街の角の本屋はドラッグストアに
潰れたビルはホテルに
改装途中で灰色の幕が掛かっていた建物は
その幕が取り払われ、新しい姿を見せていた。
新しく何かが出来ると言っても
自分と関係なければなんの感慨もない。
大きい建物が増えるだけで、街の本質は変わらない。メイド服で客引きよりも自分の髪の毛を気にするあの子も、この街も ただ縦に大きくなっただけなのだ。
狭い面積に、これでもかというくらいに何かのシンボルを立てて大きく見せている。
それがまるで自分のことのように思えて、恥ずかしくなって、誰よりも道の端を歩く。
変わらない、と思うのは
景色を見ている自分の目が変わらないからだ
変わらないということを良いと、捉えられないのはいつまで経っても自分のことが好きになれないからだ。
縁石から落ちないように歩くのは、
少し先を歩く男の子と私だけだし
横断歩道の白いところだけ踏んで歩くのは
早足で歩く人波の邪魔をしているとわかっていながら、辞められない子供の私のままだ。
変わらないこと、変われないこと、
この街のネオンの明るさは
そんな曖昧なことから目眩しするのに丁度いい
難波の夜が、始まっていく。